2020年10月24日土曜日

その響きはこの方から始まった 『アイヌの響き』 あと二日です

 昨日は雨や風が吹き荒れる中

じっくりと時間をかけて企画展も店内も

ご覧になってくださるお客様がお越し下さり

ご紹介している側としては嬉しい一日でした。



前回からの続きです。


そもそもこの企画展『アイヌの響き』は

数年前にお隣の町の素敵なお店「あまりや」さんで店主の静子さんから

「アイヌ刺繍の素敵な展示があるのでいらして」というお誘いを受け

山北ユカコさんの個展を拝見しに行った時に

その作品に心打たれ ユカコさんとご縁がつながったことで始まりました。

(詳しくは以前の投稿をお読みください『アイヌの響き』 始まりました①


アイヌ刺繍と言っても

伝え教えてらっしゃる方のそれぞれ大切になさるものが違うので

伝統的な文様でさえ 刺される方によって大きく印象が変わるものなんだと

ユカコさんの作品を観た時に驚きました。


例えば茶道や華道といった伝統文化のようなものでさえ

継承する際に 厳格な決め事はあっても

流派が違うものが支流のように別れて遺り 

伝わっていくというのが性(さが)です。


本流が言わんとする伝えんとする 最も芯の部分

それが何であるかを読み解くのは 

その人それぞれの個性に近い

多彩な才能が関わってなされることですから

どんな文化でもそうやって多くの人を介して咀嚼され

今に伝わっているのです。


ユカコさんの刺繍を観た時

これまでの自分の中にあった「アイヌ刺繍」への印象が

大きく変わったのを感じました。


自由でいいんだ。。。

なんて楽しそうなんだ・・・


もちろんこれまで拝見してきたアイヌ刺繍だって

美しく その魅力には惹き込まれる

素晴らしい作品がたくさんあったとは思うのですが

わたしの中で 

「静」を感じることはあっても

「動」を感じることはありませんでした。


あまりやさんでその印象を素直にユカコさんに問いかけたところ

「教えてくださっている加藤シヅエ先生が 

今どきの便利な手芸道具などなかった時代のアイヌの女性たちが刺していたような

自由でおおらかな気持ちで刺してみましょうと言ってくださる方なんです~」

とおっしゃり 

ユカコさんはその精神を受け継いでいるのだと納得しました。


しかも「刺してると楽しいんだろうな。。。」と伝わる感覚が

糸の走りに残っている気がする作品なのです。



実は

『アイヌの響き』の最中にも

わたしがユカコさんのアイヌ刺繍から感じた

『動』を感じる瞬間が何回かありました。


それは オープニングライブに飛び入り参加してくださった

縄文大鼓の山本さんがライブ後 再びteto2にお越し下さり

ユカコさんの着物の中でどうしても気になるものがあってと

広げて眺めていた時に

ユカコさんが着てみます?といって 

驚き 一変で嬉しそうな表情になった山本さんが「はい!」と言って

ユカコさんの着物の中で一番好きだというのを羽織ったときのことでした。


山本さんの身体に着物が纏われた途端

刺された文様が息を吹き返したような印象がふわっと広がったのです。


その美しさったら・・・
















アイヌ刺繍が刺された着物が 広げて展示してあるだけでは

決してわからない その躍動感。

文様が踊るような ふわりと浮き上がるような感じがしました。




そしてまた別の日、

一緒に展示してくださっている 

結城幸司さんがお越しくださった時。


結城さんにもユカコさんが着てみてもらえますか?

と勧めてみたところ


結城さんももちろんいいですよと

ふわりと着物を羽織られました。



この時はまた山本さんとは違って


結城さんの身体になんとしっくりくるのだろう。。。

着物が喜んでいる・・・



と唖然となるほど お似合いで…

その「似合う」というのは

フアッション的にマッチしているとか素敵とかいうレベルではなく


本来着るべき人の身体に纏われた時に着物は生き返るのだなあ。。。と

なんだか周りの空気感も変えてしまう感じがありました。


刺された文様は山本さんが羽織った着物とは違って

色も茶や紺がベースで 落ち着いたイメージのものではありますが

結城さんが羽織った途端 文様に力が宿る気がしました。


文様には魔除けなどの意味があり

アイヌである結城さんのDNAと 着物に刺された刺繍の意味が

ピタっと出会った気がしたのです。


その時の感動はわたしの中でも強く残りましたが

刺繍を刺されたユカコさんご自身も

大好きな結城さんに着ていただけて光栄だという喜びとともに

きっと大事な感覚が残ったと思います。


ユカコさんの刺す『動』を感じるアイヌ刺繍でなくとも

もしかしたらこの文様の躍動感は 

誰かが羽織ることで感じることはできるのかもしれませんが

私には やはりユカコさんならではの 

アイヌ刺繍であったからこその何かがあの瞬間にあった気がしてなりません。


『アイヌの響き』は ユカコさんの刺繍が

わたしの心に響かせたものから始まり

企画展の最中も 私やお越しくださった方々に

いろいろな響きを感じさせてくださいました。



残り2日間


まだの方はぜひお越しになってくださいね。


最後にユカコさんの略歴も載せておきます。


また山北ユカコさんは只今江別市を中心として 

アイヌ刺繍の刺繍教室も開催しておりますよ。


興味のある方は会場でご本人にお尋ねくださいね。

*teto2にお電話いただければお繋ぎもいたしますよ❤



山北ユカコ


青森県弘前市出身

北海道江別市在住


2004年「札幌古典文様を学ぶ会」参加

加藤シヅエ氏に師事


2006年 江別アイヌ刺繍同好会「ユペオッの会」参加


2010年より江別市内において アイヌ刺繍教室開催


2014年 アイヌ工芸作品コンテスト刺繍伝統部門 優秀賞受賞


2017年 アイヌ工芸作品コンテスト刺繍伝統部門 奨励賞受賞



*結城さんが以前太鼓の皮に書かれた文様を

今回の企画展に合わせ

ユカコさんが刺繍された作品も 

この響きあいがもたらした傑作だと思います。

ぜひご覧くださいね。